奨学金が返せないのはなぜ?甘えなの?理由や滞納時のペナルティや対処方法等解説

奨学金が返せないという理由や滞納時のペナルティについて紹介します。

奨学金を利用して大学や専門学校に進学する人は多いです。

ですが、必死に勉強して学校を卒業したあとに奨学金を返還できない方が多いのも問題です。

奨学金を返せないのは甘えであるという考えを持っている人もいると思いますが、一概に甘えだとは言えない状況の人がいることも事実です。

奨学金を借りている方の現状と、卒業後の奨学金を返還できなくなってしまう原因を理解して、奨学金を借りている人やこれから借りる人の参考になればと思います。

この記事でわかること
  • 奨学金が返せないと信用情報に傷が付き、最悪の場合財産の差し押さえになる
  • 奨学金が返せない割合は年々増加している
  • 奨学金が返せない人は本人が低所得であることが最大の原因である
  • 奨学金が返済できないときは減額返還などの制度を検討しよう
  • 奨学金にはいろいろな種類があるので自分の契約を把握することが大切

奨学金が返せないと困っている人は多い

ここでは奨学金が返せないと困っている人が多いという事実について紹介します。

奨学金制度とは

そもそも奨学金制度とは、家庭の事情などで進学のための資金が用意できない学生に対して、学費の付与や貸与を行う制度のことです。

奨学金を借りることで家庭の事情や金銭的な心配をせずに、大学や専門学校などで勉強をすることができます。

ただし奨学金を借りた場合、ほとんどの方には卒業後に返還義務が発生します。

そして、いろいろな理由で奨学金が返せないという人も多いということも事実です。

まずはここで奨学金の現状などを紹介します。

奨学金の平均借入総額・返済額

まずは奨学金の平均借入総額と返済額を紹介します。

奨学金の平均借入総額は約324万円、奨学金の毎月の返済額の平均は16,880円でという調査結果があります。

また完済までにかかる平均年数も14.7年です。

奨学金は進学するために必要だったとはいえ、返済生活が長く続くのは負担に感じている人も多いといえます。

(参考:奨学金や教育費負担に関するアンケート調査|労働者福祉中央協議会)

奨学金が返せない割合

次に奨学金が返せない割合を紹介します。

日本学生支援機構の令和2年度の奨学金の返還者についての調査によると、返還できない人と返還している人の人数は以下のようになります。

属性 人数
返還を要する者 4,545千人(返還期日到来分のみ)
返還している者 4,254千人
1日以上の延滞者 291千人
3ヶ月以上の延滞者 132千人

奨学金の返還を1日以上延滞している人は29万1千人、3ヶ月以上の延滞をしている人は13万2千人となっています。

借りた奨学金を返すのは当たり前のことですが、いろいろな理由で返還ができない人がこれだけいるというのも問題です。

貸したお金が返還されないということは、他の人が利用するときに回すお金がなくなることに繋がります。

(参考:令和2年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果|令和4年7月 独立行政法人 日本学生支援機構)

返せない奨学金の相場・平均

返せない奨学金の相場や平均について紹介します。

奨学金の返済金額はいろいろな条件で変わります。

  • 月々の借入金額(月3万円〜12万円)
  • 何年借りるか(進学先により異なる)
  • 金利(有金利・無金利)

この記事でも紹介したように借入総額の平均は約324万円という結果もでています。

卒業と同時に300万円以上の借金を背負うというのはかなりの負担になります。

実際に働いてみると、仕事ができなくなるリスクや、低所得で借金の返済に苦労する可能性は誰でも抱えています。

借りる段階でメリットだけでなく、リスクや返済計画、利用できる制度なども確認しておくことが大切です。

返還免除になるのは死亡か精神・身体の障害

奨学金の返還が免除になるのは、奨学金を借りた人が死亡か精神・身体の障害により、返済ができなくなったときです。

返還免除になる条件は以下の通りです。

奨学金が返還免除になる条件
  • 奨学金を借りた人が死亡した場合
  • 精神か身体の障害により労働能力がなくなった場合
  • 労働能力に高度な制限を有していて返還ができなくなった場合

返還免除になる場合は上記のように、かなり限定的になります。

ほとんどの場合は免除にならず、返還義務が生じることを理解してください。

免除になるのは本人に不幸があったときということになので、できれば免除条件には該当しない人生を送れることが望ましいです。

奨学金が返せないのは甘えなのか?

奨学金を返せない人が多いということを紹介していますが、奨学金が返せないことは甘えなのでしょうか。

奨学金を返せない人たちの中には甘えとはいえないような状況の人が多いです。

なぜなら奨学金を返せない最大の理由は本人が低所得であることだからです。

  • 学費が上がっていて借入金額が大きくなっている
  • 不景気で給料が安定していない、昇給もしない
  • 給料も上がらず、生活するので精一杯

奨学金を借りて卒業後に就職をしても社会全体が不景気のため、給料が安く安定しないのでは返済は困難です。

誰でも好きで低所得になっているわけではありません。

これは本人だけでなく社会にも原因があるため、奨学金を返済できないのは甘えだとは一概には言えない状況です。

奨学金を滞納するとペナルティはどうなる?

ここで奨学金を滞納するとどのようなペナルティがあるのかを紹介します。

滞納することで発生するペナルティには以下の6つがあります。

  • 延滞金が発生する
  • 連帯保証人に請求がいく
  • 3ヶ月を超えると信用情報がブラックになってしまう
  • 新規クレジットカードやローンの審査に落ちるようになる
  • 一括返済を請求される
  • 裁判により給料や財産の差押えになる

滞納することでペナルティはあっても得をすることはありません。

どのようなペナルティがあるのか、リスクなども理解して滞納しないように注意してください。

奨学金の種類により延滞金が発生する

奨学金を滞納すると、奨学金の種類によって延滞金が発生します。

奨学金には2種類あります。

  • 貸与型奨学金(返還が必要)
  • 給付型奨学金(返還が不要)

延滞金は返還が必要な貸与型奨学金に発生するものです。

延滞金は年率2.5%〜10%で設定されています。

貸与型奨学金にも種類があります。

  • 第一種奨学金(無利子で借りる)
  • 第二種奨学金(有利子で借りる)

更に借りた時期や返済方法、採用年度などで延滞金は異なります。

自分がどれに当てはまるのかを確認してみてください。

期日までに返済ができていれば延滞金は支払う必要のないお金です。

期日までに返済をすることを徹底できるようにしてください。

連帯保証人へ請求がいく

次に連帯保証人へ請求がいってしまいます。

連帯保証人は通常の保証人と違い、借入をしている本人と一緒に返済をするという義務があります。

あなたが滞納をしてしまうことで、あなたを信頼して連帯保証人になっている人のもとへ返還請求がいってしまいます。

連帯保証人になってくれた方との信頼関係にも傷が付き、その方のご家族にも迷惑がかかってしまいます。

滞納はしないようにしてください。

3ヶ月以上の滞納で信用情報がブラックに

奨学金の返済を3ヶ月以上滞納してしまうと信用情報がブラックになってしまいます。

信用情報がブラックになると大きなペナルティが課せられます。

信用情報がブラックになったときに課せられるペナルティは以下のものです。

  • 新規クレジットカードの審査に落ちてしまう
  • 新規ローンの審査にも落ちるようになる
  • スマホの新機種を購入するときに分割払いで購入ができなくなる

ブラックになることはとてもリスクが大きいです。

ブラックになる前に返済をすることが大切になります。

信用情報がブラックになることで新規クレジットカードやローンの審査には落ちる

信用情報がブラックになることで新規クレジットカードやローンの審査には落ちるようになってしまいます。

これは信用情報を各金融機関で共有しているためです。

新規クレジットカードの作成や、ローンを組むことができないということは日常生活にも大きな打撃となります。

ローンの審査に通らないということは、生活費が厳しくてもお金を借りることができず、マイホームや車を買いたくてもローンを組むことができません。

車やマイホームは高い買い物なので、ローンなしでは購入は厳しいという人が多いです。

また信用情報がブラックになると最低でも5年は消えません。時間が経過する以外に、信用情報がきれいになる方法はないです。

このペナルティが5年以上続くのはリスクが大きいので、ブラックにならないように注意してください。

長期間滞納すると一括返済しなければならなくなる

奨学金を長期間滞納すると一括返済しなければならなくなります。

大学を卒業し仕事をしているとしても、300万円以上の大金を一括返済することはできないという人がほとんどだと思います。

払えるのであれば繰り上げ返済をしているはずです。

生活や実家への仕送り、趣味、貯金など生活しているとお金はいろいろなところにかかります。

そのような状態で一括返済をしろと言われても払うことはできません。この段階で払うことができなければ、このあとに説明する強制執行になってしまいます。

それを避けるためにも、この段階になる前に返済をしていくようにしてください。

裁判に訴えられ給料や財産の差押えなど強制執行が行われる

奨学金の返済を滞納していると、裁判に訴えられて給料や財産の差押えなどの強制執行が行われます。

強制執行は裁判所から許可を得て行われるので、拒否することはできません。

また給料の差押えをされるということは、確実に家族や会社にも奨学金の返済を滞納していることがバレてしまいます。

奨学金を借りている人はたくさんいますが、滞納して給料の差押えをされることで、会社での信頼が下がる可能性があります。

この段階になる前に、なんとか返済できるように行動してください。

副業でお金を稼いだり、事情を話して家族に相談することも効果的です。

奨学金が返せない状態になるきっかけや理由はなぜ?

ここで奨学金が返せない状態になるきっかけや理由を紹介します。

奨学金が返せない理由には以下の5つがあります。

  • 仕事が忙しくて返済を忘れてしまった
  • 病気や事故で入院した
  • 無職になり無収入になった
  • そもそも返済するものだと知らなかった
  • 新卒の収入では返済しながら生活ができなかった

前提として奨学金の返済方法は口座振替のみとなります。

奨学金を借りた学生が指定した金融機関から引落しがされるため、自分が指定した口座にお金を用意しておけば定期的に返還が可能になるというシステムです。

ですが、それでも支払いができなくなってしまう人は毎年発生します。

仕事で忙しくなった、うっかり忘れてしまった

奨学金が返せない理由に仕事が忙しくなり、うっかり返済を忘れてしまったということがあります。

これは奨学金の返済用の口座と給料用口座などが異なる場合に発生しやすい問題です。

給料が口座に入金されて、そのあとに奨学金返済用の口座に返還分のお金を移動しておくつもりが、仕事が忙しくて銀行に行く余裕がなかったということが考えられます。

仕事に追われるうちに、奨学金の引き落とし日を忘れてしまったことも原因です。

対処法としては以下のような方法があります。

  • ネットバンキングを利用する
  • 給料が入ったらすぐに引落し用口座に入金する習慣をつける
  • 銀行の自動送金機能などを利用する

ぜひ取り入れやすいものを実行してみてください。

病気や事故で入院して支払えなくなった

奨学金が返せない理由に病気や事故で入院をして支払えなくなったということがあります。

病気や事故が原因で入院するリスクは誰にでも平等に存在します。

病気や事故で入院してしまうと、その間は働くことができません。

働けなくなれば収入も下がりますし、退院をしてもリハビリや復帰の準備など、自分のことで手一杯の状況が続きます。

働けなかったときでも家賃や光熱費などの支払いはあるので、生活のためにはそちらも支払わなければなりません。

入院すると奨学金を返すのが困難になってしまうのはそのような理由からです。

無職で収入がなくなった

奨学金を返せない理由に無職で収入がなくなってしまったということがあります。

当然のことですが、無職になってしまうと毎月の収入もなくなってしまいます。

収入がない状態で奨学金を返すことはできません。

無職になってしまう理由にはいろいろなものがあります。

  • 会社が倒産してしまった
  • 病気などの理由で働くことができなくなった
  • 失業後に転職先が見つからない
  • 人間関係が原因で働けなくなった

これ以外にも無職になっている理由は人それぞれです。

誰でも好きで無職になっているわけではありませんが、返済をしていくためには働く必要があります。

今ではいろいろな仕事があります。

在宅でできる仕事などもあるので、収入を得るための努力は続けることが大切です。

返済するものだと知らなかった

奨学金を返せなかった理由にそもそも返済するものだと知らなかったということもあります。

奨学金は給付型奨学金と貸与型奨学金の2種類があります。

給付型奨学金は不要の奨学金です。

給付型奨学金を利用している場合は、返済する必要はありません。

ですが貸与型奨学金を利用している場合は、返済義務が発生します。

奨学金を利用している場合は、自分が利用している奨学金が貸与型か給付型かを確認する必要があります。

貸与型奨学金を借りていても給付型奨学金だったと思っていると、返済義務がないと感じてしまう可能性があります。

返還するものだと知らなかったとしても、返還しなければ滞納になってしまいます。

新卒の収入で借金返済しながら生活していくのは難しい

新卒の収入で借金返済しながら生活していくのは難しいということも理由です。

大学を卒業して就職しても、本人が低所得だと借金返済をしながら生活は難しいということに繋がります。

理由としては以下のようなものが考えられます。

  • 中小企業で給料が低い
  • 仕事の関係で一人暮らしをしている
  • 親への仕送りや経済的支援をしている

上記のような状況に当てはまる方は、就職して収入を得ても借金返済しながら生活をするほど収入が安定しません。

しかし自分の生活に回す必要最低限のお金を返還にまわしてしまうと、生活が困難になってしまいます。

生活ができなくなれば仕事を続けることも困難になってしまいます。

新卒の収入で借金返済をしながら生活をしていくのは難しいというのは誰にでも起こりうる問題です。

(奨学金の使い道は?授業料・学費以外の生活費や遊び等自由に使っていいのか等解説)

奨学金が返せない時の対処方法

ここで奨学金が返済できないときの対処方法を紹介します。

具体的な方法は次の3つです。

  • 返還期限猶予制度を利用
  • 減額返還制度を利用
  • 債務整理

利用するための条件や審査などはありますが、滞納してしまうリスクを抱えているのであれば利用を検討してみてください。

使える制度を知っていれば、いざ返済ができなくなってしまったときに利用することができます。

ここでどのような制度なのかを確認して、奨学金が返せないときに検討してください。

返還期限猶予制度を利用する

奨学金が返せないときの対処方法として返還期限猶予制度を利用するという方法があります。

返還期限猶予制度とは

返還期限猶予制度とは、病気や災害、失業などで経済的に困難な状況に陥ったときに利用することができる制度です。

所定の書類を提出して審査に通ることが条件ですが、通ることができれば返還が猶予されます。

注意
  • 認められた期間は返還をしなくていいということになりますが、返還が必要な元金や利子がなくなるわけではないということに注意してください。

支払わなくていい期間ができたことで、返済が完了するまでの期間は長くなることも覚えておいてください。

この制度のメリットは一般的な返済遅延とは異なり、延滞金が発生しないということです。

また返還期限猶予制度には2種類のものがあります。

  • 一般猶予
  • 猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予

「一般猶予」は現在返還が困難な人が一定期間返還を待ってほしいときに申請する制度で、適用期間は最大10年になります。

ただし、災害、傷病、生活保護受給中、産前産後休業、育児休業、一部の大学校在学、海外派遣の場合には10年という期限はありません。

「猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予」は、「猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金」の貸与終了後、一定の収入や所得を得られるまで返還を待ってほしい場合に申請することができる制度です。

こちらは一般猶予とは違い、適用期間の定めはありません。

減額返還制度を利用する

奨学金の返還ができないときの対処方法として減額返還制度を利用するという方法があります。

減額返還制度とは

毎月の返還額を減らすことができる制度です。

経済的な理由などで奨学金の返還が困難になっても、毎月の返還額が少なくなれば、返還を続けることができるという場合に適応されます。

適応される期間は最大15年です。

1回申請すると12ヶ月分適応されるので、毎年申請をする必要があります。

申請をして認められれば継続して減額を受けることができます。

経済的な理由で毎月の返還が厳しいという人は一度相談をしてみてください。

奨学金以外に借金がある場合には債務整理も検討する

奨学金以外に借金があって返済ができない場合は債務整理も検討してみてください。

債務整理をすることで借金の返済額を減らすことが期待できます。

奨学金のみであれば、上に書いた制度を利用して月々の返済額を少なくすることができますが、他の借金はそうはいきません。

奨学金以外にも借金があり返済ができないのであれば、まずは債務整理を行って借金の総額を少なくすることが効果的です。

借金の総額が少なくなれば、返済をするためのハードルも下がり、奨学金の返済に回す経済的な余裕も出てきます。

弁護士や司法書士への債務整理の相談は無料で行える事務所もあります。

相談に行くのはハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。

ですが、借金に困っている現状を変えるために、プロに相談できるので効果的です。

早ければ早いほどダメージは少ないですし、改善するために早く行動を開始できます。

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